3月短観 今年度計画0.5%増

 

日銀が1日発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、2021年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比0.5%増となった。製造業では新型コロナウイルス禍で止めていた投資の再開を探る動きも出てきたが、前年の投資急減の反動にすぎない可能性もある。業況の厳しいサービス業は投資に慎重な姿勢が続く。

20年度の設備投資額は全規模全産業で前年度比5.5%減になり、20年12月の前回調査(3.9%減)から下振れした。コロナ禍が長引くなか、企業が投資計画を先送りしたり、取りやめたりする動きが出ている。

今回の調査で示された21年度の計画は0.5%増だった。中小企業の投資方針が定まらない年度初めの計画はマイナスになりやすいが、今回は統計を遡れる1984年度以降、初めてプラスになった。QUICKが集計した民間予測の中心値(0.3%減)も上回った。ただ増加率は小幅にとどまる。日銀は「これまでの設備投資計画が21年度に持ち越された可能性がある」と指摘する。

業種別でも差が大きい。輸出・生産の持ち直しで景況感が改善する製造業では全規模で3.0%増となった。高速通信規格「5G」向け電子部品などの需要増が寄与する。

一方、非製造業は全規模で1.0%減。特に中小企業は7.9%減と20年度に続いて大幅なマイナスを見込む。コロナ禍の影響が直撃する飲食・宿泊などは引き続き収益環境が厳しい。サービス業を中心に投資を抑えて手元資金の確保に努める動きがうかがえる。

雇用面でも温度差がにじんだ。人員が「過剰」と答えた企業から「不足」の割合を引いた雇用人員判断DI(指数)は全規模製造業でマイナス2と7ポイント低下し、人手不足の状態に転じた。一方、非製造業はマイナス20と横ばい。構造的な人手不足感はあるものの、雇用環境が改善しているとは言い難い。

企業の資金繰り環境は緩やかに改善した。資金繰りが「楽である」と答えた企業から「苦しい」の割合を引いた資金繰り判断DIは、全規模全産業でプラス9と2ポイント改善。非製造業が横ばいの一方、製造業で5ポイント改善した。

一部の企業で売り上げが持ち直したため資金繰り懸念が和らいでいる面もある。政府・日銀の支援策も奏功し、金融機関は融資に積極的な姿勢を示している。ただ、サービス業などでは売り上げの急回復が見込めず、資金繰りが厳しいままの企業もある。現在は抑制されている企業倒産が今後急増しないか、なお楽観はできない。

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